過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第40章 どっちもどっち
二人がシャワー室に消えて大分経った頃、
ナナシがシャワー室からひょっこり出てきて
「エルヴィンがリヴァイとミケを呼んでいる」と
名指ししてきた。
指名された二人はとても嫌な予感がしたが、
行かなかったらもっと嫌な事しか起こらない気がしたので
渋々シャワー室へと向かう。
シャワー室には服も着替えて綺麗になったエルヴィンが
壁に背中を凭れさせながら座っていて、
その双眼は遠くを見つめたままだった。
一体何が起こったのだとリヴァイとミケは恐る恐る声を掛ける。
「エ、エルヴィン・・・?」
「何が・・・あった?」
「・・・・・・・・・・男である二人に尋ねたい」
「う、うん?何を・・・」
げっそりしたエルヴィンは覇気の無い声で言った。
「入浴中にいきなり入ってきた想い人が、
自分の全裸を見ても眉一つ・・・表情一つ動かさず、
あれやこれやと身体の隅から隅まで洗ってくれた事実を
どう思う?まして私には気が無いと言っている癖に
本当に甲斐甲斐しく『疲れが良く取れるから』と言って
全身マッサージを施して丁寧に髪も洗ってくれて・・・」
「良かったじゃねぇかよ、少しは報われそうで」
「聞く限り・・・おまえに不利な状況では無かったようだな。
・・・・自慢の身体には魅力を感じてくれなかったようだが」
惚気に近い愚痴を聞かされているようで
リヴァイもミケも付き合いきれないとばかりに
話を切り上げようとしたが、エルヴィンの独り言は止まらない。