過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第40章 どっちもどっち
すぐにミケが出てきたので、ナナシが「大丈夫かな?」と
心配していると危惧した通りシャワー室からは
床に何か落ちる音やドシンという重い音が何度も響いてきて、
一同もシャワー室へ視線を投げる。
「エルヴィンは大丈夫なのか?ミケ」
「大丈夫だから出て行けと言われたんだが・・・
あそこまで音がすると不安だな」
「誰か様子見に行った方が良いんじゃない?」
「では私が行ってこよう」
「「「え?」」」
ナナシがジャケットとブーツを脱ぎ、
いそいそとシャワー室へ向っていると
背後から三人に引き止められる。
「待って!ナナシが行ったらそれはそれで大変な事にっ!!」
「馬鹿か、てめぇ!素っ裸になったエルヴィンの所に行ってみろ!
確実にヤられるぞ」
「今のエルヴィンに理性や節制は無い」
必死に言葉を紡ぐ三人にナナシはフッと微笑う。
「安心しろ。今のエルヴィンに私を襲う力は残されておらん。
仮に残されていたら・・・バスタブに三十秒程沈めれば
大人しくなるはずだ」
「やめろ。お前が言うと冗談に聞こえないから恐ろしい」
「しかも、何だその具体的な数字は」
「エルヴィン相手にそれを実行出来ちゃう辺りが本当に凄いと思う」
ナナシは天然のドSだ。
無邪気で悪気の無いところが余計に質が悪い。
特にエルヴィンに対しては容赦無いドS振りを発揮する。
反対に普段ドSなエルヴィンがナナシ限定で
ドMになるのだから、世の中よくわからないと
三人は静かに思った。
これ以上ナナシを止める言葉が見つからず三人が
シャワー室に入る彼を黙って見送ると、
直後シャワー室からエルヴィンのものと思われる男の悲鳴が
聞こえてきたが聞かなかったことにした。
中で何が起こっているのか・・・・知りたいようで知りたくない。