過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第40章 どっちもどっち
ナナシの言葉を遮って忙しなく入室してきたのは
ハンジとリヴァイで、ミケと同様エルヴィンの状態に
驚愕しているようだった。
いつもポーカーフェイスなエルヴィンが、
巨人を前にしているような険しい形相を晒している事から
事の異常さを悟り、ナナシに説明を求めるが
彼は思案顔で「まだ強いか・・・」とぶつぶつ何やら呟いている。
「取り敢えず、一旦外してまた調整し直すが・・・良いか?」
「・・・・・・・・・あぁ・・・」
ナナシとエルヴィンの会話に首を傾げるミケ達を尻目に、
ナナシがエルヴィンの腕から器具を外すと、
強張っていたエルヴィンの身体からやっと力が抜けた。
よくわからないが、エルヴィンに起きていた異常事態が
無くなったのだと彼の様子を見て
ミケ達はホッと安堵の息を吐き、
再度どういう事か説明を求める。
エルヴィンは突っ伏していた身体を起こし、
疲れきったような声で事情を説明し始めた。
「その腕輪を装着すると、
常に筋肉を使用していなければならない状態になるんだ。
最初は普通に歩くことも儘ならず苦労した挙句、
短時間なら兎も角・・・一日の大半をその状態で過ごすというのは、
頭で考えるよりももっと大変でね。
今のように無様な姿を晒す羽目になったという訳さ」
「え?じゃあ、そのボロボロの姿はナナシにボコられたんじゃなく・・・」
「自滅だ。普通に歩けなくて転びまくっておった。
・・・・というか、何でエルヴィンがボロボロになると
私が原因になるのだ?心外だ」
ハンジに間髪入れずナナシはツッコんだが、
「前科があるからね」と一蹴され、眉を寄せる。
「言っておくが私から手を出したことは無いぞ。
全部正当防衛だ」
「うん、わかってる。またエルヴィンがナナシにちょっかい出して
ボコられたのかと思っただけだよ」
ケタケタ笑うハンジに、リヴァイとミケが無言で頷いていたので
居心地悪くなったエルヴィンは咳払いをすると
「シャワーを浴びてくる」とミケの肩を借りて
シャワー室へ消えた。