過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第38章 エッカルト・アーデルハイトの日記2
(中略)
×月○日
代行達が交渉に成功したらしい。
どうやら1週間後の壁外調査で成果を出せたら、
団長の命を助けるという・・・。
勿論、俺はその壁外調査に志願した。
ダメだと言われてしまったが代行達が壁外にいる間、
団長を見つけ出せたら救出して欲しいと言われたので承諾した。
×月△日
代行の顔色が優れない。
他の先輩達の顔色も・・・・。
壁外に行く兵士の人選は妙だった。
新兵とか若いやつが一人もいないのはわかるけど・・・
何か心に引っ掛かった。
しかも国から代行達に与えられた武器は剣のみだった。
これじゃあ、まるで代行達を殺そうとしているみたいじゃないか。
×月○日
代行達は壁外に出発した。
皆、死を覚悟している顔をしていて鬼気迫るものがあった。
開閉扉が閉じられ、王都へ向おうとした俺達の耳に
信じられない言葉が聞こえてきた。
『馬鹿な奴らだ。壁外に行ったって団長を助けるわけ無いだろう。
明日には処刑されるらしいぜ』
それはたまたまマリアに来ていた貴族なのだろう。
ぶくぶく肥え太った豚が厭らしい笑みを浮かべながらそう言ったんだ。
殴りかかろうとした俺をクレイグが止めた。
俺達の成す事は団長が処刑される前に助けることだ。
仲間の間でのみ使える脳波電信を使って、代行達の声を拾った。
悲惨だった。
皆死ぬつもりだったのだとその時初めて知った。
仲間の断末魔を聞きながら俺達は王都に向かった。
その間に聞こえてくる声が徐々に減っていって、
泣きそうになった。
×月×日
やっと王都に着いたが、その頃には代行達の声が
全く聞こえなくなっていた。
そして団長の処刑が今日だという事を知り、
急いで刑場へと向かった。
そこには腕を縛られた団長が跪いていて、
今まさにその首が斬られようとしているところだった。
団長は遠くにいた俺達に気づいたのか顔を上げて、
こっちを見つめフッといつものように穏やかな笑みを浮かべた。
そして最期に代行の名を呼んで、その首は落とされた。
何も知らない奴らは歓声を上げて喜んで、
俺達はただ泣くしか無かった。