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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第37章 腕相撲








エルヴィンが合図してもナナシとミケの腕は動かなかった。


開始の合図と共に一気に勝負が決まると思い込んでいたリヴァイ達は、
どちらにも傾かない拳に首を傾げる。


ミケがナナシの様子を伺って手を抜いてるのか、と
ミケの顔を見てギョッとした。


彼は額に汗を滲ませ、歯を食いしばっていたのだ。

よく見れば組んだ手が小刻みに震えていて、
合図と共に勝負が開始されていた事が伺えた。


しかし、ミケに対しナナシの表情は涼しく、
力を込めているようには到底見えない。


「私は見た目に反して力が強くてな・・・」


腕相撲しながら、ナナシはリヴァイに語りかける。


「地力はここにいる誰よりも上だと自負している。
お主があの技を使えない一つ目の理由は『地力が足りない』からだ。
あのスピードを出す瞬発力が足りない上、
身体に掛かる負荷に耐えられる肉体では無い」


ナナシは徐々に筋肉操作で腕に力を込め始め、
膠着状態を解き始めた。

腕は段々ミケの方に傾いていく。


「二つ目は、あの技に必要な『同時動作が出来ない』事だ。
あれは同時に瞬発力、精密性、肉体強化などをこなさなければならないが、
お主がそれを一つでもやろうとすれば身体が保たん。
無理に使用しようとすれば・・・・・」


グッと力を入れ机にミケの手を勢い良く叩きつけた。


「死ぬぞ」


無表情ではなく、真剣に説くナナシの眼光に
その場にいた全員が圧倒されたが、
ナナシがすぐいつもの表情に戻ったので
張り詰めた空気が一気に霧散する。




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