過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第37章 腕相撲
「特殊?」
「護剣術と護身術だ」
意外な訓練内容にエルヴィンは目を丸くする。
何故、対巨人用訓練ではなく護剣術と護身術なのだろうか?
リヴァイ達も同じことを思っているらしく全員の視線が
ナナシへ向けられた。
「調査兵団団長なら色々な輩から恨みを買っておるだろう?
命を奪うものが巨人だけとは限らんからな。
要は壁内で死なない為の訓練だ」
対巨人用訓練も大事だが、
それは他の兵士が頑張れば良いと思っている。
そう告げるとエルヴィンは何かを考えるように暫し黙ったが、
間を置いて疑問を口にする。
「対人格闘は一通り習得しているつもりだが、
今以上に必要な技術がある・・・・という事か?」
「私が教える技はお主らが体得している対人格闘とは毛色が違う。
『不利な状況』に陥っても対応出来る技だ」
「具体的には?」
人間の恐さを知るエルヴィンでも、
壁外調査を主とする調査兵団団長が
対巨人用訓練の時間を削ってまで護身術を習うべきか
考え倦ねているのだろう。
下手したら中傷されるかもしれないが、
これはエルヴィンにとって大事な技術だと
ナナシは確信に近い考えを持っていた。
かつて自分が愛した男は人間によって殺された。
もしも拘束された状態で抵抗が出来ていたなら
結果が違っていたかもしれないのだ。
同じ過ちは二度と繰り返さない。