過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第37章 腕相撲
話を聞く限り戦闘力が劇的に変化はしないが、
綿密に練られた訓練メニューは堅実そのものだ。
一人一人に合った訓練を根気強くやる事で、
苦手な物を克服し長所も伸ばせるようにしてあるらしい。
だから人によって熟す訓練が違う。
内容が異なる訓練がABCDあるとして、
兵士1はAとDの訓練をし、
兵士2はBとC、
兵士3はCとDというように、
その人物にあった訓練が割り振られているのだ。
ナナシに渡された兵士全員のデータ書類を徹夜で読んだエルヴィンは、
その内容の細かさに感嘆し、半年で戦力の底上げをすると
豪語したナナシの自信にも納得するしかなかった。
「わかった。ナナシの作成してくれたこのメニューを
半年続けてみよう」
エルヴィンの言葉にナナシはホッとしたが、
「あと一つ質問がある」と続けられ、
何か問題でもあったか?と首を捻る。
「私の訓練メニューが白紙なのは何故だ?」
パラリと自分のデータが纏められた紙面を見ながら、
エルヴィンは怪訝な表情で尋ねた。
自分に宛てがわれた訓練メニューには
全員が行う基礎訓練しか明記されておらず、
一瞬記入漏れかとも思ったが
ナナシに限ってそれは無いだろうと考え直したエルヴィンは
率直に問うた。
その言葉を聞いて「あぁ!」と手を打ったナナシは
「お主の訓練は特殊なものにしたからな」
と悪戯っ子のような表情でエルヴィンを見つめた。