過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第5章 地下街のゴロツキ
リヴァイの言葉にグッと息を詰めながら視線を彷徨わせたファーランは、
それでも諦めきれないようで何かを考え込んでいるようだった。
今回の仕事は地下街でトップクラスの情報屋が
ファーランに仕事を持ち掛けたらしい。
定期的にそこを利用するリヴァイ達は店主との付き合いもそこそこあり、
互いの力量や信頼関係もまずまずなはずだった。
だからこそ、急に持ち掛けた仕事を撤回するというやり方が解せないのだ。
リヴァイも内心では面白くないと思っているが、
何か裏があるのだと勘が告げているのでファーランのように
その仕事に固執しようとは思っていない。
ただ、情報屋に納得のいく説明はしてもらわなければメンツに関わるとは思っていた。
「もう、兄貴もファーランも今そんな顔したってしょーがねぇだろ!
これでも食えよ!」
重苦しい空気が流れる中、それを払拭するかのように突然イザベルが明るい声を上げ、
手に持っていた菓子を二人に差し出した。
リヴァイとファーランはイザベルの持ってきた見たこともない食べ物を
凝視しながら固まる。
見ればイザベルの姿は少しボロボロで、
何かあったのではとリヴァイは眉を顰めた。
「…そのナリはどうした?」
「ん?あぁ、これか。ちょっとな」
リヴァイの問いにイザベルは笑いながら流そうとしたが、
リヴァイはそれを許さず説明するようにと睨みつける。
「ちょっと拳で語り合った奴がいてさ…。
陽の光が当たる廃屋あったじゃん?何とかっていうじいさんが住んでた所。
あそこは俺等の縄張りなのに勝手に入ってきやがったからガツンとやり合って……」
「それでどうした?」
「話してみたら良い奴で…ダチになって…明日も会おうって約束した。
これもそいつから貰った」
「「………………」」
段々声が小さくなっていくイザベルの話を聞いたリヴァイとファーランは、
怪しい物を見るかのような目つきで団子を見る。
「これ…食って大丈夫なのかよ?毒入りじゃねぇか?」
「んな事ねぇよ!すっげー美味いんだから!」
ファーランの言葉にムッとしたイザベルは一本団子を手に持ち
二人に見せつけるように食べてみせた。