• テキストサイズ

過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第36章 模擬戦







体調不良でゆっくり歩くナナシに
エルヴィンが自然な動作で合わせてくれた事が嬉しかったが、
「手を繋ぐ?」と手を差し出されて子供扱いされたと思ったナナシは
ムッとした。

「お主より年上だ」と主張すると、
エルヴィンが目を丸くした後吹き出したので首を傾げる。


「・・・子供扱いしたんじゃなくて、恋人扱いしたんだけどな」


その言葉でやっとエルヴィンの言動に納得したが
「まだ執着しているのか」と問うと、
彼は「きっといつまでも執着するよ」と寂しそうに
返してきたので言葉に詰まった。


整った顔が悲しみで歪むのが、とても嫌だと感じた。


エルヴィンにはエルヴィンに相応しい女性がいるはずなのだから、
そんな顔をするなと言おうとしたが、口を噤む。


そんな言葉を望んでいないとわかっているから、
それを口にするのは憚られたのだ。


彼が『迅鬼狼』の誰かの子供だったとしても、
ナナシはずっと傍にいられない。


今までエルヴィンから異常ではあったが
真剣に口説かれた事を思い出すと心が痛んだ。

仮初の相手をするのはエルヴィンに対しても失礼だし、
何より愛するソロモンへの裏切りでもあると思ったから
冷たく突き放してきたのだが
・・・・すこし心が揺らぎ始めている。

彼が『迅鬼狼』の血縁者かもしれない事に対する
罪悪感からなのかはわからないが、
エルヴィンから離れがたくなっているのは事実だ。

だから、エルヴィンが引っ込めた手を
ナナシが握ってしまったのも仕方ない事だと思う事にする。





/ 1001ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp