過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第36章 模擬戦
「君の血が付いたからって気にしていないよ」
「いや、気にしろ。
血を媒介に厄介な病気を移されたらどうするんだ?
今後は血に触れないように気をつけるべきだ」
調査兵団団長がそんな無防備でどうするのだと言われ、
エルヴィンは「今度から気をつけるよ」と目を細めて笑った。
こんな時にも人の心配をするのか・・・と
エルヴィンの心は暖かくなる。
血を流し終えても動いたらまた吐いてしまいそうだったので、
ナナシは仕方なく木陰に座り込み
身体を落ち着くのを待つことにしたが、
エルヴィンが当たり前のように自分の隣に座ったのでぎょっとした。
団長なら忙しいはずで、こんな所で座っている場合ではないだろうに。
批難めいた視線を向けても微笑みを返されるだけで
何の効果も無かったので「先に行ってろ」と言うと、
彼に「私もたまには一休みしたいんだ」と返され
何も言えなくなる。
確かに一休みした方がエルヴィンの身体の為だと、
ナナシは彼の仕事量を思い出した。
化物並みのスピードで書類を片付けるエルヴィンを見た時は
本当に凄いなと思ったものだ。