過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第36章 模擬戦
「掌を見せなさい、ナナシ」
「・・・っ!断る」
エルヴィンは身を引こうとする身体を強引に引き寄せ、
拳をこじ開けるように力を込めた。
「良いから見せろ。ここでは私に従え!」
威圧感の籠もった張りのある声に
ナナシの身体はビクリと硬直する。
抵抗が弱くなった隙にエルヴィンは一本ずつナナシの指を開かせ、
掌に付着した血を視認すると眉根を寄せた。
「これは何だ?」
「・・・・トマトジュースが付いただけだ」
苦しい言い訳にエルヴィンは更に眉間の皺を深くする。
このご時世、トマトジュースは高級品で滅多に手に入らないのだ。
血をそれで誤魔化そうとするなんて・・・と、苛立ちが募る。
「ほう?君は高級なトマトジュースを一人でこっそり飲んで、
うっかりそれが手に付いてしまったと?
どれ、私もご相伴に預かっても良いかな?」
エルヴィンがそう言って掌の血を舐めようとしたので、
ナナシは手を引っ込めようと力を込めたが、
彼の力は想像以上に強くそれも敵わない。
仕方なくエルヴィンの頭をガシッと掴んで阻止すると、
彼から氷のような目を向けられ言葉に詰まった。