過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第36章 模擬戦
無論、ナナシにはちゃんとした考えがあって飛ばなかった。
立体機動装置は確かに便利な物だが、
所詮は対巨人用の武器で人間を相手にする事を前提に
考えられてはいない。
地面スレスレの・・・しかも小柄な人間を正確に攻撃するのは
熟練した兵士でも難しいものなのだ。
立体機動での空中戦の方が彼らはやりやすいだろう。
案の定、どうするべきかと遥か頭上にいる兵士達の動きは
止まっている。
ナナシはゆっくりとした足取りで
兵士が足場にしている大木まで行くと、
訓練用ブレードを超振動させ蛇のように畝らせて
一気にそれを斬り倒した。
訓練用ブレードでは柔らかくて何も斬ることが出来ないが、
『柔剣』で切れ味を強化してしまえば木さえ斬る事が可能だった。
足場にしていた木を斬り倒されるとは思っていなかった兵士達は、
動揺のせいで二人がアンカーを打ち直す事も出来ずバランスを崩した。
その隙を見逃さず、ナナシは足に力を入れ跳躍する。
瞬間移動したように標的の背後にナナシが姿を現した時には、
二名の身体に赤い塗料が付着していた。
袈裟懸けに塗られた塗料に本人達は気づかないまま
地面に蹴り落とされたが、地面に叩きつけられる寸前
下で見守っていたリヴァイやミケ達によってキャッチされ
事なきを得る。
脱落した兵士は放心状態のまま、救護室へと運ばれた。
その様を見てリヴァイは思わず舌打ちする。
「ナナシの野郎・・・本当に容赦無くやりやがって・・・」
「そうだな・・・木を斬り倒した技も凄いが、
瞬間移動したように相手を屠る手腕も実に素晴らしい」