過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第36章 模擬戦
ナナシを含む六人にスナップブレードの代わりに
訓練用の特殊ブレードが支給された。
それはゴムのように柔らかく撓り、
何も斬る事が出来ない代物だった。
当たってもボヨ~ンとクッションが働くので軽い打撲で済む上、
何かに当たると赤い塗料が出る仕組みになっている。
「制限時間は三十分。相手を斬り急所に赤い塗料を着けるか、
行動不能にさせれば勝ちだ。降参させても構わない。
立体機動のみに頼らず壁外にいると思って臨機応変に戦ってくれ」
エルヴィンの張りのある声に全員が気を引き締める。
観戦者も息を呑んで開始の合図を待った。
スタートを表す信煙弾が上がると五人は立体機動を使い、
戦い易い木の上へと飛んだ。
・・・が、ナナシだけは地面に足を着いたまま、
立体機動を作動させなかった。
対戦相手の兵士も観戦者も、そんなナナシの行動が理解できず
「あいつ立体機動の使い方知らないじゃね?」
「本当に強いかどうかもわからないしな・・・」
「団長達は一体何を考えているのか」
などと、陰口を叩き始める始末だ。
どよめく兵士達を尻目にエルヴィン達はナナシを観察するように
静かに見据えた。