過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第36章 模擬戦
凄絶な笑みを浮かべながら言うエルヴィンに
リヴァイはまた舌打ちする。
何度かナナシの技を教えろと頼んだが、
彼から良い返事が貰えなかった事に苛立ちが募った。
あの技が使えれば、どれだけ多くの仲間が守れるだろうか。
ナナシは頻りに「お主には使えぬ」と言っていたが、
ナナシに使えてリヴァイに使えない納得のいく説明が無いせいで、
いつまでも諦めきれない。
そうこう考えている内に、
二名の兵士がまた空から落ちてきたので
リヴァイはガスを吹かし、それを受け止める。
残り一名・・・
観戦していた兵士達は絶句したまま、
圧倒的な技で四人の精鋭を叩きのめしたナナシを見つめていた。
そして、木を足場に跳躍したナナシが
残りの一名のワイヤーを切断して、
バランスを崩したところを地面へ叩き落とし、
勝敗が決する。
五分も経たない内に勝負が着いてしまった模擬戦に
訓練場は静まり返り、風で葉が揺れる音しか聞こえない。
意識を失った兵士が担架で運ばれると、
木の上から立体機動を使ってナナシが悠々と地上へ降り立った。
何事も無かったかのようにエルヴィンへ歩み寄ると、
ナナシは異様な空気に首を傾げた。