過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第35章 薬
「却下する。君の吸血行為は異常だ。
他人に目撃されてしまえば私も糾弾されかねない。
足を掬われる事態を防ぐ為にも認める訳にはいかない」
端からエルヴィン相手に口で敵うはずもないかと、
ナナシは肩を竦めた。
そんな事よりも大事な事がある。
「わかった。その件に関してはまた今度で良い。
それよりもエルヴィン・・・頼みがあるのだが・・・」
「・・・・・・・・・頼み?」
自分の名前を素直に呼んだナナシに、
エルヴィンは訝しげな視線を送る。
「何だ、その目は」
「・・・・いくら私が名前を呼んで欲しいと頼んでも
呼んでくれなかったのに、と思ってね」
「ではスミス団長」
「言い直さなくて結構。それで頼みというのは何だい?
君のお願いなら何でも聞きたいところだが、
残念ながら内容にもよる」
「・・・冷静になってみれば、私が頼むほどのことではなく、
むしろお主の為というべき事なんだが・・・・・」
はっきりとは言わず、ぶつぶつと言い訳のように話し出したナナシに
エルヴィンが首を傾げていると、コトンと小瓶が机に置かれた。
「何も聞かず、これを飲んでくれ!」