過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第35章 薬
話を聞いたハンジは「女みたいな指摘するんだね!」と
ゲラゲラ笑っているが、そこはスルーだ。
相手にしていたらキリがない。
「責めたいのは、備考欄に書いてある
『こいつの血が飲みたい。美味しそう』という部分かな。
複数人に同じような事が書いてあるようだが、
どういうつもりか説明してもらえると有り難い。
それとも、これも現実逃避の一環か?」
凄みのある笑みを浮かべたエルヴィンに
笑っていたハンジの声が聞こえなくなった。
物音一つしなくなったことから
膝を抱えてソファに座っているのだろうと
数日の付き合いで予想はついたが、
それを確かめるには後ろを振り向かなければならない。
今エルヴィンから視線を逸らすのは危険だ。
「単なる欲求と要望を認めてみた。
ダメだとは言われたが、主張はしておくべきかと・・・・」
やめろ、エルヴィンの逆鱗に触れるな!という
リヴァイとミケの声が聞こえてきそうな程二人から視線を感じる。
「随分良い度胸をしているね?私の血では不満だったかな?」
「不満じゃない。・・・が、お主が条件の一つを悉く破っているのだから、
これくらいの要求は飲むべきだと考えた」
セクハラ問題に言及するナナシにエルヴィンはぴくりと眉を動かす。
それを言われてしまえば返す言葉も無いが、
エルヴィンは一歩も退かなかった。