過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第34章 報告したが故に・・・
ソファに座って項垂れているエルヴィンに
仁王立ちになって怒るナナバは大変迫力があり、
流石のエルヴィンも反論が出来ないようで大人しく聞いている。
「全く・・・誰に対してもスマートにお付き合い出来る
エルヴィン・スミスはどこに行っちゃったの?強姦未遂だよ?
男として最低だって思わないの?」
「返す言葉もないよ、ナナバ・・・」
「何でそんな奇行に走るかな?そんなに溜まっているの?
娼館にでも行ったら?」
「いや・・・どうもおかしいんだ」
急に思案顔になったエルヴィンにナナバは首を傾げ
「どういう意味?」と尋ねた。
「ナナシを前にすると・・・というより存在を感じてしまうと、
突然自分をコントロール出来なくなってしまうんだ。
今までにない感覚が全身を駆け巡って理性を失ってしまう。
まるで、それが当たり前のルールで、
ナナシを求めるのが必然だと言うように・・・だ」
手の動きを確認するように見つめるエルヴィンにナナバは
「恋は盲目って言いたいの?」と呆れたように言ったが、
ナナシには嫌な考えが頭を過った。
確か・・・『迅鬼狼』のメンバーの中にも時折エルヴィンのように
ナナシに執着する人間がいたなと思い出す。
だが、それは対巨人用に肉体改造したメンバーのみに現れる現象で、
ナナシはエルヴィンを改造していないのだから、
その仮説が彼に当てはまるはずがない。
それなのにやたら嫌な予感がするのは何故だろう?
ナナシは発想を飛躍させて「もしも」の仮定を作ってみる。
もしもエルヴィンの血縁者に改造手術済みの
『迅鬼狼』メンバーがいたとしたら、どうなる?
ナナシは改造手術したメンバーを全員覚えているし、
その後の末路も把握しているので可能性は低いが、
子孫が全く存在しないとは言い切れないだろう。