過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第34章 報告したが故に・・・
「あやつはまず腕を縛ることから始めた・・・。
何なんだ?ベッドの上で対人格闘でもしたかったのか?
私から技を学びたかったのか?そうだ、そうに違いない。
『セクハラするな』と条件にも入れたし、
男だとわかってて襲いに来る馬鹿はいないはずだ!」
半狂乱になりながら自分を説得するように喋るナナシに一同は
「いや、エルヴィンはナナシ限定で馬鹿だから」と心の中で呟く。
「何故だ!?昔はあんな天使みたいに可愛かった小童が、
大人になって性格破綻を起こしているなんてっ!
この世界は残酷過ぎる!折角、金髪碧眼のイケメンに成長したのに
一体何があってあんなに狂ったんだ?
あんな性格じゃなかったら、うっかりときめくレベルの
イケメンだぞっ!?勿体無い!」
あぁそんな風に思ってたんだ、とハンジ達は思ったが
口には出さず、本音がだだ漏れるほど混乱しているナナシを
そっと見守った。
今のナナシの言葉を聞いたら、エルヴィンは大喜びするだろうが
何となく教える気にはなれない。
「いきなり襲い掛かってきたせいで加減も出来ず、
脳天に鍼をぶっ刺してしまったではないか!」
ナナシの叫びを聞いて、4人は血の気が引く思いがした。
状況を確かめるべくミケが慌てて仮眠室の扉を開けようとしたが、
その前にエルヴィンが仮眠室から出てきたのでホッと安堵する。
「おい、エルヴィン無事・・・・・・じゃなかったか」
エルヴィンの脳天に鍼が刺さっているのを確認したミケが
呆れたように視線をやると、彼は悪夢を見たような表情をした。
「私は・・・何をしていたんだろうか?」
「死にかけていたのは確かだな。正直呆れたぞ」
「取り敢えず、この鍼を抜いてくれないか?割りと痛いんだ」
鍼が抜けたエルヴィンはナナシに跪き素直に謝罪を口にしたが、
許さなかったのは話を聞いたナナバの方で、
エルヴィンに説教を始める。