過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第34章 報告したが故に・・・
ナナバを連れてきた頃にはナナシの勢いが無くなっていて、
彼はしゃがんで顔を覆い隠してしまっていた。
そんなナナシに寄り添ったナナバは、
子供に尋ねるように優しい声色で根気強く話しかける。
「取り敢えず、ソファに座ろうか?」
ナナバの言葉に頷いたナナシが腰を上げようとしたが、
すぐに手を着いて動かなくなった。
緊張が解けて腰が抜けたようだ。
「ど、どうしたの?まさか、痛いのっ!?」
「馬鹿!ヤられた前提で話しかけんな。クソメガネ」
バシッとハンジの頭を殴ったリヴァイだったが、
すぐに自分の失言に気づき「わりぃ」と謝る。
すぐにナナバが手を貸してソファに座らせると、
ナナシは震える声で話し始めた。
「寝ていたら、急に大男に襲われて・・・・・怖かった」
「うん・・・それはエルヴィンが悪いよね」
ナナバが優しく頷いてくれるのが、唯一の救いかもしれない。
あれ?
本当に何が起こった?
ちょっとエルヴィンを見直して心の中で褒めていたはずなのに、
今は裏切られた気分だ。
突然男に襲い掛かられる現状がいまいちよくわからない。
混乱状態の中、辿々しく話すナナシを全員が不憫そうに見守った。