過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第5章 地下街のゴロツキ
「俺…頭わりぃから気付かなかった。名前ねぇって、おまえは言ってるのに怒っちまってさ。
名前無くて辛いのはおまえなのに本当にごめんな」
あ、そう来たか。
まぁ当たらずも遠からずだけど、
訂正するのも面倒だからこのままにしておこう。
「許してくれ、この通りだ」
ガバっと頭を下げてくるイザベルに「気にしてない」と告げると、
泣きそうな顔から一転笑顔になった。
本当に表情豊かだと思う。
「ははっ!良かった!おまえ最初嫌な奴だと思ったけど、
良い奴だよな!」
「そう…か?」
「そうだぜ!なぁ、また会おう!明日、この時間にここで待ってるから来てくれよな!じゃあな!」
「え?あ、おい…」
そう一方的に言うとナナシが返事をする前に
イザベルは走り去っていった。
表情だけでなく行動も忙しないイザベルに
ナナシは呆然となる。
つい勢いで流されてしまったが、困った事になった。
明日もここに来なければならないのか?
一方的に言ってきたのだから、それを守る必要も無いと思うが
・・・気が向いたら暇つぶしに来てやっても良いかと考え直し
クレイグの店へと引き返す。