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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第5章 地下街のゴロツキ



急に馴れ馴れしくなった少女の態度に
ナナシは困惑しながらも不愉快さが生まれていない事に気づく。

多分『仲間』がいたら、こんな風に他愛のない話をして
他愛のないやり取りで笑い合うのだろう。


屈託なく普通に接しられる少女が酷く羨ましく思えた。


実はナナシは今までこんな風に扱われたことは無い。
確かに『仲間』はいた。

しかし、その誰もがナナシに敬意を示しても
親しげにしてくることはなく、見えない壁のようなものを
感じていたのだ。

自分は化け物だから仕方ないと思っていたが、
まさか初対面の相手からそんな扱いを受けるとは思わず
どういう対応をして良いかわからない。

固まった動かないナナシの様子に少女は首を傾げた。


「どうした?やっぱ店出せねぇのか?」

「…材料が多く手に入らんからな。大量生産は難しいだろう」

「そっかぁ…砂糖とか高級品だからな」


勘違いした少女の誤解を解くのも面倒臭かったので
適当に話を合わせていると、少女は団子を取ろうとした手を止め
残った三本の団子を見つめながらおずおず口を開いた。


「あ、あのさ…この残ったダンゴ、持って帰っちゃダメかな?」

「ここで食えばよかろう?」

「すっげぇ美味かったからさ、持って帰って兄貴と・・・
・・・ついでにファーランにも食わせてやりてぇんだ」


照れ臭そうに笑う少女にとって相当大事な人間なんだろうと思い、
それを了承すると彼女は酷く喜んだ。


「サンキューな!あ、おまえ名前は?
俺はイザベルっていうんだ。よろしくな!」

「あ、あぁ…」

「あぁ…じゃねぇよ!名前だよ名前!」

「な、ナナシ…だ」


得も言われぬイザベルの迫力にナナシが少し引き気味になりながら答えると、
彼女は「え?」と大きな瞳を更に大きくさせた。


「名無しって何だよ。ふざけてんのか!?」

「巫山戯ているつもりは無いが…」


どう答えるべきか考え込んでいると、
イザベルが何かに気づいたかのように「あ」と声を漏らすと
「わりぃ」と謝罪してきた。


コロコロ変わる態度にナナシは、忙しい奴だなと思いつつ
顔を向けると泣きそうな表情のイザベルがそこにいた。


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