過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第34章 報告したが故に・・・
「本当に大丈夫だ。少し考え事をしていただけだから・・・・」
「そうか?身体に異常を感じたら、すぐに言うように」
温かかった手が額から離れ、ナナシは何となく寂しい気持ちになった。
人との接点を無くそうとしている癖に、
一人で生きていくことを酷く恐れている自分が情けなく思う。
こんな感傷的になってしまうのも、
メンテナンスをしていない身体が不調のせいだ。
「・・・やはり仮眠室を貸してくれ。夕食まで寝る」
「そうしなさい。ハンジ達が来たら起こすよ」
執務室に併設してある仮眠室に入ると、
ナナシはベッドに潜り込みそっと目を閉じた。
仮眠室にはベッドと小さめなチェストくらいしか置かれていないが、
仮眠を取るには十分な部屋だ。
エルヴィンがよく使っているせいか、
彼の匂いがしてそれを吸い込んでみる。
匂いがするというのは生物の証だ。
逆に言えば匂いがあまりしないナナシは生物とは言えないのかもしれない。
だから、何かの匂いを嗅いでいると少し落ち着くのだ。
匂いに執着するミケの気持ちも少しなら分かる気がすると思いながら、
ナナシは眠りに落ちた。