過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第32章 メデューサの微笑?
「あれの人生を狂わせたのは私なのだろうか・・・」
エルヴィンの前では見せない悲しげな表情に、
ミケは息を呑んだ。
普段エルヴィンを突き放してばかりいるナナシの態度を
あまり快く思っていなかったが、
そんな態度を取らなければならない理由があるのかもしれないと、
ミケは考えを改める。
冷静になってみれば、ナナシは文句を言いながらも
エルヴィンには甘い気がした。
エルヴィンの変質的な愛情にドン引きしても、
最終的には傍にいる事を選択したナナシはある意味凄いと思うのだ。
ミケのみならず、他人には真似出来ない決断だろう。
というか、自分なら即行逃げる。
現に今もエルヴィンのセクハラが続いているのに、
彼が出て行かない事には頭が下がる思いだ。
ナナシは自分にはわからない想いをエルヴィンに抱いているのかもしれない。
これが単純な相思相愛だったら楽だったろうにと、
ナナシの匂いを嗅ぎながら重くなってしまった空気を
どう払拭するか考えた。
「ナナシ・・・俺に笑いかけてみろ。
さっきの話が本当か確かめたい」
医務室に来た経緯を思い出したミケが唐突に話を振ると、
ナナシは困惑な色を浮かべる。