過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第32章 メデューサの微笑?
「俺がまだガキだった頃・・・・
草むらで寝ていたのはおまえか?」
人の体臭は千差万別で、ここまで同じ匂いの人間が
二人もいるとは思えない。
ミケが半ば確信を持ちつつ尋ねると、
ナナシは「やっと思い出したのか」と口元を僅かに緩ませた。
「まさか匂いで思い出されるとは思わなかった」
「あの時、顔に巻かれた布が邪魔でおまえの顔を見ていない。
匂いで辿るのは当然だ」
「お主でなかったら気付かなかっただろうに・・・失敗したな」
「・・・・・・・失敗?」
そんなに思い出して欲しくなかったのだろうか、と
ミケが眉を寄せるとナナシは遠い目をした。
「私に関わると碌な事が無いからな・・・。
エルヴィンの時も顔を隠しておくべきであったよ」
「・・・あの時には既に会っていたのか、おまえら」
昔出会ったとは二人から語られていたが、
そんな昔の事だとは思わず「ん?」と、とある事に気づく。
『エルヴィンの初恋=ナナシ』という事は、
エルヴィンがミケの予想よりも長い時間片思いを
続けている事実に驚嘆した。
初恋拗らせると厄介になる訳だ・・・と
心の中で頭を抱えていると、ナナシは目を伏せながら
独り言のように零した。