過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第32章 メデューサの微笑?
「あぁ?何生意気言ってんのよ!?
あたし達がこんな奴をやっかむはずないでしょう!?」
「そうよ、こんな色気もない田舎娘に、
どうして私達がっ!」
本人の言う通り、彼女達は調査兵団にいるにしては
化粧もしていて色気のある女達だとナナシは思った。
恐らく、美人の部類に入るだろう。
彼女達もそんな自分の容姿に自信を持っていて、
プライドも高そうだと推察出来る。
だが、それだけだ。
調査兵団では美しさよりも強さが優先される。
そんなに男の気が引きたければ、
憲兵団か駐屯兵団に行けばよいものを・・・と
心の中で舌打ちした。
「・・・・化粧、ヒビ割れてますけど」
「な、嘘っ!?」
「そんなはずないじゃない!」
否定しながらも、彼女達が顔を手で覆い隠したので、
よっぽど塗りたくってるんだなーと笑いたくなった。
ナナシは溜息を吐くと、お局様達へ口説くように言葉を紡ぐ。
「勿体無いですね・・・貴女方はこんなに美しいのに、
何をそんなにやっかむ必要があるのですか?
ペトラさんよりも貴女達が綺麗だというのは男だったらわかるはず・・・。
こんな下らない事をせずとも、世の男は貴女方の虜です」
自然な動作で手を取り、手の甲にキスを落として上目遣いで見遣ると、
頬を朱く染めたお局様が口を抑えながら目を泳がせた。
止めとばかりに微笑むと、彼女達は口早に
「そ、そうね。あなたの言う通りだわ」と言って、
そそくさと退散して行った。
その後姿を見ながら、ナナシは安堵の息をつく。
・・・・良かった、まだこの手は有効だったか。
ソロモンに固く禁止されていたものの、
穏便に済ますには一番有効なやり方だった。