過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第31章 本来の目的
「だったら何だ」
「だとすると、その心臓は身体から切り離されて長い時間が
経過しているね」
何が言いたいのだ、と睨みつけたが、
エルヴィンから返されたのはなんとも言えない表情だけだった。
これ以上追求されては堪らないと、
ナナシは自分のトレイを持って扉を開け
「これは条件の内の一つだ。情報は貰うぞ」と言って立ち去った。
エルヴィン・スミスという男は本当によくわからない。
ナナシに「惚れている」などと言っているが、
それは表面上で裏では何を画策しているかわかったものではない。
自分は恋愛方面にとても疎いが、
理解不能な妄執に囚われているだけで
彼の眼の奥が本当に慈愛に満ちた試しは無かったと回想する。
そこで、はたと我に返る。
「・・・・・妄執、・・・か」
金狼が死んで一体何十年になるのか・・・・、
妄執は自分にも言える事だと自嘲する。
バラバラになった彼の死体を探し集めて、
自分はどうしようというのだろう。
心臓を取り戻しても、彼は決して生き返らないのだ。
迷いが生まれたのは久々だな、と思いながらナナシは
その場から足を踏み出した。