過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第30章 血を吸う
エルヴィンもナナシが口から血を採取する事に
同意するとは思っていなかったので、
素直に着ていたシャツを肌蹴させる。
椅子に座っているとはいえ、エルヴィンはでかい。
立っているナナシと座っているエルヴィンの頭は、
ほぼ同じくらいだった。
首筋から血を吸うには、
身体を乗り上げなければならなかったので二の足を踏んでいると、
エルヴィンは「手は出さないよ」と可笑しそうに嗤った。
手を出されたらその場で出て行く気満々だったが、
あからさまに馬鹿にされるとナナシもムキになってしまう。
挑発に乗ってエルヴィンの膝に身体を乗り上げると、
思いっきりその首に歯を突き立ててやった。
エルヴィンの血が口内に広がった瞬間、
その血の味にナナシは愕然とする。
予想以上に甘く美味な味にチュウチュウと無心で血を啜った。
しかも、その味には酷く覚えがあり、
つい彼の肌にも舌を這わせた。
・・・・これ、ソロモンと同じ味?
若干差異はあるが、
愛している男と同じ血の味を持つエルヴィンに夢中になって
しがみついた。
エルヴィンは血を啜っているナナシの異変にすぐ気がついた。
初めは遠慮気味に血を吸っていたはずなのに、
途中から我を忘れたように容赦なく歯を突き立て貪る様子は
異常だった。
そこまで痛みは無いが、時折子犬がミルクを舐めるように
肌に舌が触れると、嫌でも変な気を起こしてしまいそうになるのだ。
一瞬、煽っているのか?と勘ぐってしまいそうになるほど、
舌技が巧妙に感じる。
他の男にも同じことをしたことがあるのかと考えると、
嫉妬で腸が煮え繰り返そうになるので必死に違う事を考えた。
これは早々に引き剥がすべきか、とも思ったが、
稀に見る密着具合が勿体無かったのでナナシの気が済むまで、
そのままの状態を維持する事にした。
両手をナナシの背中と腰に回しても気づかない程、
夢中になっている姿にエルヴィンは熱い息を吐いて理性を総動員させる。