過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第30章 血を吸う
その言葉にナナシは、
確かにそろそろ欲しいかもと思い視線をエルヴィンにやると、
彼は両腕を広げて「おいでおいで」をしてきた。
胡乱な眼差しを向けたが、
彼に堪える様子は無いので大人しく傍へ寄る。
「何処から吸うんだ?」
「・・・・・指で良い・・・」
ナナシの答えにエルヴィンは明らかに落胆したようで
「どうせなら首筋とかどうだい?」と無駄に大人の色気を醸し出した。
別に首筋でも良いけど・・・何となく身の危険を感じてしまい、
言葉に詰まる。
「首筋だと・・・失敗した時、大惨事になるぞ?指が無難だ」
「ふむ・・しかし、指だとグリップを掴む手前、
怪我をすると感覚がおかしくなる場合があるからな。
あと私の場合ペンが持てなくなるのは困る」
左手の指から血を吸えば問題ないじゃないか、とは思ったが、
言葉で勝てる気がしないので黙る。
「他だと、どこが傷が治りやすい?」
「治りやすさで言えば口腔内の粘膜・・・・・・・・」
そこまで言ってナナシは「しまった!」と手で口を抑えたが
後の祭りで、エルヴィンは「では、それでお願いしよう」と
微笑を乗せた。
――こいつ絶対それ知ってて私に言わせたな・・・っ!
面白そうに笑っているエルヴィンにその案を却下すると、
ナナシは最初に彼が提示した首筋で手を打つことにした。