過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第29章 綺麗な物語は万人に受け入れられる
「余程愛していたんだろうね、それ以来ナナシは女を捨ててしまった。
女でいることが許せなかったのかもしれない。
しかし私は『彼女』に女として生きることを受け入れて
貰いたいんだ。強制され無理矢理ではなく、
自然とそうなるようにね。下着を贈ったのも
『彼女』の反応を見るためのものだった。
・・・裏目に出てしまったようだが」
成程、そういう意図があって下着を・・・・・って、え?
やり方が酷くね?
いやいや、しかし団長には深い考えがきっとある!
・・・・・はず。
「根気がいるが私はそうしたいと思っている。
それには協力者が必要なんだ。君達にも是非協力してもらいたい。
ナナシは随分君達に心を許しているようだからね・・・
飴細工をあげるほどに」
にっこり笑ったエルヴィンの目が笑っていないように見えるのは
気のせいだろうか?
しかし、何故自分達がナナシから飴細工を貰ったと知っているんだ?
恐ろしい・・・・。
懐疑的な考えが浮かび、エルドは勇気を出して
疑問を口に出すことにした。
「団長、一つよろしいでしょうか?」
「何だ?」
「団長はナナシさんの裸を見たことが無いとおっしゃいましたが、
何故女性だと断言出来るのですか?」
直球な質問に狼狽えたのは他の3人で、
ペトラは「ちょっと、エルド!?」と声を荒らげたが、
エルドは「この際、疑問に思うことははっきりさせておきたい」と言って、
エルヴィンを見据えた。
そんな4人にエルヴィンは「構わないよ」と笑顔を向ける。
「実は『彼女』は私の初恋相手なんだ」
「「「「え・・・っ!?初・・・恋!?」」」」
先程からもたらされる驚愕の事実に、
4人は目を白黒させるしかない。
そんな4人を尻目にエルヴィンは遠い目をしながら、
語り出した。