過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第28章 新兵の料理
「因みに女の子の方は髪の毛を引っ張られたくらいで
済んだらしいよ」
「あちゃ~、あの子も被害に遭ってたのか~」
ナナバの報告にハンジが呆れた声を出しエルヴィンを見ると、
彼は腕を組みながらミケに兵士の所在を問うた。
「イェフ、ダニーロ、ドーラ、ハイケの四名はどこにいる?」
「兵団近くの酒場に・・・・」
「そうか、帰り次第ここに来るよう伝えろ」
今酒場に押しかけても大事になるだけで
調査兵団にとって恥にしかならない。
穏便に済ませるには内々に処理する必要があった。
その対処に不満気に口を尖らせたのはハンジで、
新兵達の心配をする。
「でもさ、団長直々に叱責しちゃったら
『告げ口しただろ~!』って新兵達が怒られない?
確かに新兵に暴力振るって押し付けたのは許せないけど、
今日の夕飯が、彼らが作ったものじゃなくて良かったっていう声も
上がってるんだよ?」
「規律の問題だ、ハンジ。
ここで許してしまえば今後も同じことが繰り返される」
「まぁ、そこはエルヴィンが上手く言ってくれるでしょ。
・・・ところでナナシは何かされなかったの?」
ナナバからの問いにナナシは首を横に振った。
「やられる前に連れて行かれたからな。
やられたらやり返しているさ。
それこそ、両手足の関節外してタコ殴りだ」
その言葉にビクリと反応したのはエルヴィンで・・・
つい先日ナナシから受けた暴力を思い出して身震いした。
実際にそれをやられてしまったら大変な事になってしまうな、と
危機感を募らせる。
「ナナシ・・・頼むから穏便に済ませてくれ」
「暫くは大人しくしているつもりだ」
暫くって一体どのくらいだ?
ナナシを雇った初日から問題が起こるとは
何の厄日だと思わずにはいられないエルヴィンだった。
(ナナシは特に何もしていないが)