過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第28章 新兵の料理
「・・・・…ところで、君が厨房にいた理由を尋ねても良いだろうか?
目立たないように配慮していたつもりだったが、
何か不備でも?」
「あぁ、あれか。目立たないようにした結果があれだった」
「説明しなさい、ナナシ」
説明と言われ、ナナシは頭の中で数時間前の状況を整理する。
ここで団長であるエルヴィンにあの出来事を言ってしまえば、
告げ口になるのだろうか?
別に自分は事実を伝えても良いのだが、
3人の新兵が後日強要した先輩兵士達にリンチにあっては
寝覚めが悪い。
どうしたものかと考えていると団長室の扉が勢い良く開いた。
「やっほー!食事は終わったんだね」
乱入してきたのはハンジで、ノックもせず入ってきた彼女に
エルヴィンは批難めいた声色を上げた。
「ハンジ・・・ノックしなさい」
「あはは、ごめんごめん。
ナナシがエルヴィンに襲われているんじゃないかと心配だったんだ」
「・・・・・・・それで、どうだった?」
軽口を流したエルヴィンにハンジは片目を瞑って
「予想通りだった」と言って、ナナシの隣にドカリと座った。
「厨房にいた新兵達に聞いたら、
皆無理矢理押し付けられたって言ってたよ。
何でも『怪我で料理が出来ない』とか何とか・・・
笑っちゃうよね~。だって彼らは怪我なんて全然してないもん」
「・・・だろうな。身体を庇っている様子が無かった上に、
新兵に手を上げたんだろ?」
「気づいてたんだナナシ・・・それ私が彼らから聞き出すのに
時間掛かったんだけど」
「無意識の行動だろうが一人は腹を・・・、
一人は足を気にしていたからな」
「さっすが~」
「声が外まで聞こえているよ、ハンジ」
ノックと共に室内に入ってきたのはナナバとミケで、
ハンジの会話を引き継ぐように話し始める。