過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第28章 新兵の料理
「・・・私にくれるのかい?」
「子供に駄々を捏ねられるのは好きではない」
「ははっ、君にとって私は子供か。
でもリヴァイにあげるんじゃなかったのか?」
「また今度作れば良い。食事が冷める前に食べるぞ」
「そうだね、頂こうか。
君の手料理が食べられるなんて光栄だ」
「・・・・いただきます」
エルヴィンの言葉を無視して手を合わせると、
彼も手を合わせ食事を始める。
彼は料理を口にする度に「美味しい」と笑い、
時折調理方法や味付けについて尋ねてきた。
その様子をジッと見つめながら、
ナナシはエルヴィンの事をカッコイイと褒めていた新兵を思い出す。
確かに普通にしていればカッコイイんだよな。
笑顔だって作り笑いじゃなければ、
それなりに可愛いとかカッコイイとか思えるのに・・・・。
思わず溜息を吐くと、心の中で褒められているとは知らず
エルヴィンは首を傾げ「どうかしたかい?」と目を丸くする。
「何でもない」と返し、黙々と食事を口に運ぶと
彼もそれ以上の追求はしてこなかった。
食事を粗方食べ終わった頃、
それまで和やかだったエルヴィンが張り詰めた空気を纏い、
ナナシを見つめた。