過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第28章 新兵の料理
「ありがとう、
ゆっくりで良いから二人分用意してくれないか?」
「は、はい。本日はどちらでお召し上がりですか?
執務室ででしたらお持ちしますが…」
「すまないが、執務室へ運んでもらえないだろうか?
あぁ、そこの銀髪の君・・・頼むよ」
「・・・そのくらい自分で運べ」
名指しされたナナシがボソリとそう呟くと、
慌てた新兵がナナシの口を塞ぎ「持って行かせます」と
愛想笑いをして取り繕った。
新兵達は団長や分隊長に対して態度がでかいナナシに疑問を持ちつつ、
「ダメだよ、目上の人には敬語使わないと!」と
泣きそうな顔で忠告する。
ナナシのお陰で窮地を脱したとは言え、
上官に喧嘩を売ってとばっちりを受けるのは御免だった。
舌打ちしながら了承したナナシに笑顔を向けたエルヴィンは、
次に厨房内にいるミケ達に声を掛ける。
「ミケ達はここで何をしているんだ?」
「敵情視察に来たら、美味しい思いが出来た」
「そうか、それは良かった。
つまみ食いしたのだからもう少し空腹でも平気だろう?
ちょっと顔を貸してくれ」
何の用事か察した3人は肩を竦めると
エルヴィンについて食堂から出て行った。