過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第28章 新兵の料理
厨房にいるのが新兵だけなのを見ると、
本当の当番は仕事を彼らに押し付けたのだろう。
食べる身としては美味しいに越したことはないが、
押し付けられた方は堪ったものではないはずだ。
どことなくナナシの機嫌も悪そうで、
エルヴィンにこの事を告げるべきかと考えていると
「団長!」という声が食堂の入り口から上がり、
ミケは頭を抱えた。
何でいつも食事の時間に来ない奴が、
今日に限って食堂に現れるんだ・・・・・。
「やぁ、今日はやけに良い香りがするね」
「はい、今日のスープは絶品です!」
食事をしている兵士にニコリと微笑みかければ、
彼らは敬礼しながら感想を言った。
「団長の分取ってきましょうか!?」
「いや、自分の分くらい自分で取るよ。
君達は気にせず食事を続けなさい」
やんわり断ると、
エルヴィンは食事を配膳しているカウンターへと向かった。
エルヴィンがここに来たのはある意味偶然だった。
食事の時間だとナナシを誘いに行ったら彼は部屋におらず、
途中会ったリヴァイ班の面々からも
「途中で別れました」とか「部屋に戻ると言っていました」という事しか聞けず、
行方不明になった彼を探して回っていたのだ。
たまたま通りかかった食堂に人集りが出来ていることに気づき、
足を踏み入れると美味しそうに食事を取る兵士がいて
不思議に思った。
確か今日は、激不味料理しか作れない兵士が担当だったはず・・・。
しっかりシフトが頭に入っていたエルヴィンが「まさか」と思い、
カウンターから厨房を覗くとそこには探し求めていた人物が
オムレツを作っていて呆気に取られた。
「団長!お食事ですか!?」
「今用意します!」
厨房内の新兵達がエルヴィンの出現に緊張の面持ちで敬礼するのを手で制し、温和な笑みを浮かべる。