過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第28章 新兵の料理
「意外な特技だ」
「そう?ナナシの作るお菓子は美味しいじゃん?
料理が得意でもおかしくないでしょ」
ミケとナナバが会話していると、
夕食の配膳が始まったらしくお腹を空かせた兵士達が
カウンターに押し掛け食堂が賑わった。
「あ、私にもご飯頂戴よ!」
「カウンターに行って並べ」
元気よく言ったハンジをナナシがにべもなく切り捨てると、
彼女は「リヴァイみたいに融通がきかないな~」と
ブツブツ文句を言い始める。
いや、それ正論だから・・・とナナバは思ったが
口には出さず、スープをよそっている新兵に
「味見させて」と小皿にスープを貰い口にした。
「何これ・・・すごく美味しい・・・・」
ナナバが頬を赤く染めながら呟くと、
その皿をミケが掬い取り同じく味見する。
「美味いな・・・コクが違う」
「えっ!?二人だけずるい!私にも頂戴!」
ミケから皿を奪ったハンジが味見すると、
目を見開いて「うっまーい」と叫んだ。
スープは少々茶色いが、
品の悪い色味ではなく透き通っていて綺麗なものだ。
ハンジが作業する新兵に「もう一杯」と強請っているのを尻目に、
ミケとナナバはこっそり耳打ちし合う。
「ねぇ、何かおかしくない?今日の当番はどこ行ったんだろ
う?」
「そうだな・・・」