過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第26章 エッカルト・アーデルハイトの日記1
○月○日
受付の女の子・・・もとい副長に話し掛けようとしたら、
同期と思われるガキに先を越されて地団駄を踏む羽目になった。
物陰からこっそりその様子を伺っていたら、
そいつ副長の手を握りやがった!
羨ましいな、と指を噛んで見ていたら、
後ろから先輩が小声で「あの新兵終わったな」と呟いた。
何の事だろう?と振り返ったけど、
先輩は「くわばら、くわばら」と言って去っていった。
この組織の先輩は副長が嫌いなのかな?
△月×日
数日前からの疑問が今日全て解けた。
突然今日の訓練メニューが変更されたかと思ったら、
団長と新兵(複数)の模擬戦になって酷い事になった。
結果は団長無双で新兵がフルボッコされた。
しかも団長は丸腰で新兵達は武器を使っているのだ。
実力の違いがここまで出るとは思わなかった。
どういう基準で団長と戦う新兵が選出されたのかと首を傾げていたら、
先輩達の会話が聞こえてきて、ぞっとした。
曰く、副長は団長の恋人で、
選ばれた新兵は副長に手を出そうとした奴らなんだそうだ。
しかも新兵が入ると必ず副長が口説かれて、
その後どこで知ったのか団長が模擬戦にかこつけて
新兵をボコボコにするらしい。
「毎年恒例の行事になったな」とか「俺の時も酷いもんだった」とか
笑いながら先輩達が話していると、
鬼のような形相をした副長がやってきて団長を
フルボッコにしてしまった。
あれ?最強のはずの団長が、あんな小柄な副長にボコられている!?
とオロオロしていると、
先輩達が「これも毎年の醍醐味だよな・・・」と
泣きながら合掌していた。
え・・・ここまで毎年恒例なの?
つーか、先輩止めないの!?
ツッコミを入れると先輩達が
「無理無理、だって最強なの副長だもん。俺達じゃ勝てないって」と笑った。
もう何が真実なのかわからない。
わかったのは、
気絶した団長が副長に引き摺られていく姿が幻じゃなかったという事だ。
副長を怒らせてはいけないと肝に銘じた。