過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第25章 腹の探り合い
「わかった、君の条件を全て呑もう。
今優先すべきは戦力強化だ。下らない私情は捨てよう」
「そうか、成長したお主が見られて嬉しいぞ」
満足そうに言ったナナシに対し、
リヴァイ達はエルヴィンの決定に驚愕していた。
あれだけ今まで追い掛け回して、
「自分の物にする」と豪語していたはずなのに、
それを覆すエルヴィンが意外だったのだ。
確かに調査兵団団長として私情は捨てるべきなのだろうが、
ここまであっさり引き下がると不気味に映る。
長く傍らにいた彼らは「あー、何か企んでるな」とは思ったが、
それを口に出す程愚かではない。
何か深い考えがあるのだと自分を納得させ、
エルヴィンとナナシが握手する様を黙って見つめていた。
「そういえば、君の正確な年齢と性別を教えてほしい。
君の書類を作る際必要になるからね」
そう言われ、ナナシは自分の年齢を数えようと
空いている手で指折り数え始めたが、
長い年月生きているせいで今何歳かなど覚えているはずもなく・・・・
・・・・途中で考える事を放棄した。
指を動かさなくなったナナシに、
エルヴィンは直感で「あ、考えるのを止めたな」とわかり、
呆れる。