過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第25章 腹の探り合い
エルヴィンは彼らを無視し、
交渉を再開して「これで文句は無いな」とナナシに向き直る。
「若干一名、ガンコ汚れを落としてからでないと不安だな。
仕方ない・・・副長のモブリットに手伝ってもらおう」
「そうだね、そうしなさい。
ハンジが綺麗になってくれるなら此方も助かるよ」
「え?待って!?それって私の事だったの!?
ガンコ汚れって・・・私に油なんか付いてないよ~」
「充分脂ぎってんだろうが、クソメガネ。
こいつを綺麗にするってのには賛同する」
「・・・俺もだ。匂いが鼻について困っていた」
「ついでに部屋も綺麗にして欲しいな。
近隣住民から苦情が来てたんだ~」
リヴァイ、ミケ、ナナバが『ハンジのガンコ汚れ落とし計画(仮)』に
賛同し頷くと、ハンジは部屋の片隅で膝を抱えていじけ始めてしまった。
「皆酷い・・・まだ3日目なのに・・・」とか
「そんなに臭くないもん」などブツブツ言っていたが、
気にしたら負けだと意識下から遠ざける。
「君が教えない情報を無理に知ろうとしてはならない、
というのは君に無理強いしなければ良いんだね?」
「引っかかる言い方だが、そう捉えてくれて構わん」
「わかった。では君を仲間としてカウントしない、とは?
調査兵団に半年入るのだから、充分仲間だと思うが?」
「違うな、正式に調査兵団に入るわけではない。
私は調査兵団の兵士に戦う術を教えるだけだ、それも短期間の。
それは仲間ではないし、私はお主達を仲間だとは思わない。
だから、壁外では私を見殺しにして良いし、私も兵士を見殺しにする」
「・・・・おい、それ本気で言ってんのか?
昔てめぇが俺に言った事を言え。
それじゃあ、ここにいる連中は納得しねぇぞ」
ナナシの言葉に不快感を露わにしたリヴァイが吐き捨てるように言うと、
ナナシは「行動が変わるわけではないのに・・・」と
言いながら渋々彼に従った。