過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第25章 腹の探り合い
「え・・・・・・」
落胆の滲む声で返したナナシにエルヴィンの片眉が吊り上がる。
「・・・・・・・・・・・・・・何か不満が?」
「出来れば色々な人間の血が飲みたい・・・・・」
「理由は?」
「毎回同じ味だと飽きる」
「却下!君の悪い噂が広がるだけだ!」
鬼のような形相になったエルヴィンに対し、
ナナシは「えー・・・」と駄々をこねる子供のようになった。
姿形的に違和感が無いところが恐い、と思いながら
ハンジ達が二人の様子を窺っていると
ナナシは小首を傾げながらエルヴィンを見上げた。
「安心しろ、ちゃんと対象の意識を奪ってから血を貰うから
バレる事はない。噛んだ傷もすぐ治るしな」
「ダメだ」
「・・・・・・・・・お主に内密で団員襲うぞ?」
別に許可貰えなかったら勝手にやってやるから良いもん、と
ドヤ顔で言ったナナシを鋭い瞳で睨みつけたものの、
エルヴィンは妥協した方が得策かと考えを巡らせる。
知らない内に兵士に手を出されては困るな、と考えた挙句、
出した結論は『今この場にいるメンバーの血は吸っていいが、他はダメ』
という事になった。
その決定には即座にリヴァイとハンジが反論する。
「勝手に何言ってやがる!誰かに噛み付かれるなんて御免だ」
「っていうか、普通にうちらを生贄にしたよね?酷いよ!」
ミケとナナバは諦めたのか溜息を吐いて肩を竦めているだけだ。