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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第4章 自分にとって匂いは世界そのものだ




今なら目を合わせず匂いを嗅げる――!?


好奇心に駆られた少年は覆い被さるように、
寝入っている人間の首筋に自らの鼻を近づけた。

スンスンと鼻を鳴らして匂いを嗅ぐが、
その匂いは薄くてよくわからない。

確かに嗅いだ事のある匂いが微かにするのだが、
その匂いの正体が思い出せず歯噛みする。

もどかしくて服の上からではなく肌から直に
その匂いの正体を探ろうと鼻を密着させると、
先程より濃い匂いが鼻孔を擽った。



…この匂い、何だっただろう?生々しい感じの…



匂いを嗅ぐ事に夢中になり過ぎていた少年は
視線を感じて我に返った。

寝ていた人物が、覆い被さっている自分を凝視していたのだ。

久々に誰かと目が合ってしまった少年は
どうすれば良いかわからず固まり、
相手を黙って見返すことしか出来ずにいる。

普通に考えたら今の少年の体勢は、
目の前の人物に襲いかかっているようにしか見えないだろう。

どう弁明すべきか考えるが混乱した頭では
良い考えも浮かばず、正直に匂いを嗅ぎたかっただけだというべきか…と考えて、それをすぐ却下した。

ただ匂いを嗅ぐ行為ですら奇異に映るというのに、
この体勢でそれを言ってしまえば犯罪臭が酷くなるだけだ。


「…すまない」


だから余計な言い訳は言わず謝罪を口にした。
おずおずと覆い被さっていた身体を退かすと、
相手は上体を起こして少年に首を傾げる。


「何か謝るような事でもしたのか?」


覆面の人物の言葉に驚いて目を見開く。
あんな体勢でいたのに怒らないのだろうか?


「…何も…していない」

「では、謝らなくて良い」


気楽に伸びをする覆面に少年は目を伏せながら
「本当は、した」と正直に答えた。

自分を信じているような態度を向けてくる相手に
嘘を吐きたくはなかった。


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