過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第25章 腹の探り合い
エルヴィンが苦笑しながら答えると、
ナナシは溜息混じりで「それに・・・」と付け加えた。
「前にも言ったが、私は身体が弱く軍隊生活は送れぬ」
「・・・・・え?・・・それは本当の事だったのか?」
「私はお主に嘘を吐いた覚えが一つもないが、
お主が私の言葉を信じていないというのは今実感させてもらった。
狼少年の気持ちがよくわかるな」
溜息を吐きながら頭を抱えると、
流石のエルヴィンも勢いを失くし言葉に詰まった。
リヴァイ達も意外な事実に愕然としている。
「・・・・すまなかった。
身体が悪いなら本当に君をシーナの病院に連れて行くよ」
「医者に見せてもどうにもならんと言ったろう?」
「ま、待って!でも貴方壁外に来たじゃん?
巨人と戦った時も身体が悪そうには見えなかったよ!?」
ハンジが疑問をぶつけてきたが
「帰ってから寝込んだ」と切り返すと口を噤んだ。
部屋には重苦しい空気が漂い、
エルヴィンが言葉を掛けようと口を開いたが、
ナナシによって遮られた。
「まぁ、良いさ。それで?病弱な者を捕まえて、
まだ調査兵団に入れ、と?」
「・・・どのくらい身体が悪いんだ?」
この期に及んでまだ勧誘を諦めていないようなエルヴィンの物言いに
可笑しさが込み上げ、ナナシは彼らの前で初めて声を上げて笑った。
突然笑い始めたナナシに全員が首を傾げ、動向を見守る。