過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第25章 腹の探り合い
「君が農夫で広大な畑を持っていたなら、
少し調査兵団に融通してもらおうと考えていたのに…」
「提供出来る程の量は作っておらぬ。
・・・というか調査兵団はそんなに金欠なのか?」
「そうだね・・・壁外調査には多大な費用が掛かってしまうし、
装備の消費も激しい。憲兵団に比べれば給料も少ないのが事実だ。
だから、時折貴族や商会を回って資金調達をしなければならないんだ」
エルヴィンの言葉にナナシはピクリと反応する。
資金調達の為に貴族や商会を回っているというならば、
エルヴィンにはそれなりのコネがあるという事だ。
しかも調査兵団に金を出しても構わないくらいの
財力を持っている貴族や商人ならば、
それなりの趣味を持っているだろう。
金持ちというのは他の人間が持てない物を手に入れ、
自慢する悪趣味な生き物だ。
横の繋がりも広く、色々な情報が飛び交っているはず・・・。
その中にナナシが探し求めている物を持っている人物が
いるかもしれないと考えたが、
ここで馬鹿正直にエルヴィンに助力を乞うても
不利な条件ばかり提示されて大変な事になるだろうと思い直す。
「ねぇ、何でお茶とか飲まないの?」
ハンジから不思議そうに話し掛けられ、
ナナシは手を付けてないお茶と団子を見やると
「また薬を盛られるのは御免だから」と嫌味を言ってやった。
その言葉にハンジは「だよね~」と腹を抱えて爆笑し、
事情を知らないミケとナナバは首を傾げ、
前科のあるエルヴィンとリヴァイは苦い顔をした。