過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第20章 帰還への攻防
エルヴィンの目が捉えたのはナナシだった。
ナナシが巨人に蹴りを食らわせ、弾き飛ばしたのだ。
・・・え?今蹴った?蹴ったのか?
目の前の出来事に錯乱していると、
ナナシが攫うようにエルヴィンの巨体を持ち上げた。
極限状態ではどんなに速い動きでもスローモーションで見える・・・
と聞いたことがあるが、まさか自分がそれを実体験するとは
思わなかった。
「何をしておる!ぼさっとするな、死ぬぞ!」
「・・・・すまない」
怒鳴られながら大人しく運ばれたのは壁の上で、
モブリットや救護班がすぐに駆けつけた。
「大丈夫ですか、団長!」
「あぁ、少し頭を打っただけだ。すぐに戻る」
そう言いながら横たわった身体を起こそうとすると、
脚甲をした足に肩を強く踏まれ遮られた。
「お主はここで大人しくしておれ。
私の足を退かす事も出来まい?」
「・・・いや、君の脚力が強すぎるんだよ」
巨人を蹴り飛ばすってどれだけだ・・・お陰で助かったけども。
「ナナシさん、団長に手荒な真似は・・・・」
モブリットが険悪な雰囲気を執り成そうと声を掛けたが、
ナナシの足はグリグリとエルヴィンの肩を踏んだままだ。
やがて「わかった」と折れたのはエルヴィンの方で、
それを聞くとナナシも足を退かした。