過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第18章 『迅鬼狼』のアジト
【―――巨人の弱点である―・項・・為には・・・
『柔剣』で・・・した刃・・・補佐から受け・・・
共振させ・・・で、足を削ぐ・・・倒れ・・ところを
仕留め・・・】
肝心なところが読めないせいで意味がよくわからない!
『柔剣』とは何だ?何を補佐から受ける?共振とは?
ギリギリの歯痒さで奥歯を噛み締めていると、
ひょっこりナナバが現れ状況報告をした。
「ネス達を呼んで物資は持って行ってもらっているよ。
少数でこっそり運んでいるからもう少し時間は掛かるけど
問題は無さそう。今外でリヴァイとミケが受け渡し作業をしてる」
「そうか・・・ナナシはどうしてる?」
「作業を手伝ってくれてるよ。・・・・それにしても、凄い量の本だね」
おもむろに落ちていた本をパラパラ捲ったナナバは、
数冊手にしたところである事に気づいた。
「ねぇ、文字が掠れてて読めない本と
文字が全部残っている本があるのはどうしてかな?」
ナナバの言葉にエルヴィンとハンジは勢い良く顔を上げ、
ナナバを凝視する。
彼女は文字が落ちてしまった本とまだ読める本を
二人の前に開いて首を傾げた。
「本当だ、内容の方ばっか気にしてたから気付かなかったよ・・・」
「ハンジはそうだろうね。でもエルヴィンが気づかなかったなんて意外だよ。
相当焦っていたの?」
ハンジとナナバの会話を聞きながら、
本に視線を落としエルヴィンは二冊がどう違うのかと
相違点を探す。
一冊はエルヴィン達が知りたい内容が書かれていたはずだったが、
もう読めない。
もう一冊の、普通に読める方は
一般的な家庭にも普及している情報が書かれているだけで
特に特筆すべき内容ではないものだ。
書かれている内容次第で消せるのか?
ジッと文字を見つめていると、
インクのにじみ具合が微妙に違うことに気づき、
手を這わせた。