過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第18章 『迅鬼狼』のアジト
「今・・・『お主らは』と言ったね?では、君は?
君は招かれざる客に入らないのか?」
「・・・・・・・・・・」
「そうなんだね?では、この状況をどうにか出来るんじゃないのか?」
「・・・・エッカルトの気が済めばそのうち収まる」
「その前に何とかしてほしいんだ!」
物凄い形相で詰め寄るエルヴィンにナナシは引き気味になりながら、
自分にもどうにもならないと語った。
実際、ナナシにもどうすることも出来ない。
使われているインクには特殊な仕掛けが施されていて、
いつでも消えるように呪いみたいなものが掛けられている。
一度それが発動してしまえば、それを止めることは不可能だ。
納得出来ない面持ちのエルヴィンには悪いが、
地雷を踏んだのは彼らであって自分ではない。
「持ち出すと言い出さなければ、こうならなかっただろうな」
その言葉にピンときたエルヴィンは
「では、持ち出さないと誓う!」と大きな声で宣言した。
すると零れ落ちていた文字がピタリと止まり、
今までの異常現象が無かったかのような静寂が訪れる。
「・・・と、止まった・・・?」
「どういう事だ?」
「本!本の中身を確認しよう!」
ミケとリヴァイとハンジは急いで確認作業を行った。
片端から本を捲り、文字が残っているものが無いか確かめると
まだ読めるものがあり、ホッと安堵の息を吐く。
破れかぶれで『持ち出さない宣言』をしたエルヴィンは
何が起こったのかわからず暫く放心状態だったが、
読める本があったと知ると床に膝を着きながら胸を撫で下ろした。