過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第18章 『迅鬼狼』のアジト
「ここにある書物は調査兵団や巨人解明の為にすっごく必要なんだよ!
この場所を知っていたあんただってわかるでしょ!?
何で隠そうとするの!?」
「ここに来た目的は書物ではなかろう」
「私にとっては、こっちが重要だよっ!
お宝を前に指を銜えて見てろってのっ!?」
「ハンジ、落ち着きなさい!」
「だって、エルヴィン!」
ハンジを抑え込んだエルヴィン自身も、
ここにある資料は喉から手が出るほど欲しい。
ここにあるものが危険な代物だったとしても、
誰の目にも触れさせなければ良いのだ。
何としてもナナシを説得し丸め込まなければならない。
リヴァイからナナシの暗殺の腕を聞いているので、
戦うという選択肢はエルヴィンにはなかった。
「誰にも見つからないようにする。
だから、ここの物を持ち出す許可を・・・・」
「・・・無理だ」
「無理?何が無理なんだ?」
「エッカルトが・・・・それを許さぬからだ」
エッカルトというのはその老人の名前だろう。
しかし、彼はもう死んでいるのだ。
許す許さないという意志があるはずもない。
どう返そうか思案していると切迫したハンジの声が聞こえ、
そちらへ顔を向けると信じられない光景が目に映った。
ハンジが持っている書物からパラパラと赤黒い粉が零れ落ち、
紙から文字が薄れていったのだ。
「文字が・・・…っ!文字がドンドン消えていくよ!
どうしてっ!?」
他の本も開いて確かめると同じくインクが粉となり、
床へ落ちていく。
ハンジが半狂乱になりながら本を漁る中、
エルヴィンはナナシの肩を掴み詰め寄った。
「何をしたっ!?どういう仕掛けが・・・っ!?」
「・・・私は何もしておらん。エッカルトが読ませたくないと
判断したのだ」
「死者に何が出来るというんだ?死者にまだ意志があるとでも・・・・?」
「そうだ。お主らには理解出来んだろうが、現にそれが起こっておる。
ここはエッカルトのテリトリーで、お主らは招かれざる客だ。
自分の物を盗られぬようにするのは当然だろう?」
確かに自分が調べ上げ書いたものを横取りされるのは
気分が良いものではないが、相手は死者。
どうしろというのだ、と頭を抱えたが、
ナナシの言葉に引っかかりを覚えエルヴィンは尋ねた。