過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第18章 『迅鬼狼』のアジト
「・・・・小娘の言う通り、此奴はテロリストだろうな」
ポツリと零されたナナシの呟きに一同は驚愕の表情で彼を見つめた。
「この世に不変は無い。考え方も然り・・・。
憎いと思ってしまったら止まらなかったのであろう。
それがかつて忠誠を誓っていた相手だったとしても・・・」
「どういう意味だ?」
エルヴィンの静かな声に振り向いたナナシの瞳には
仄暗い光が宿っていて思わず身震いする。
「この世が・・・此奴を『テロリスト』と断じてしまえば、
真実がどうあれそうなってしまう・・・ただそれだけの事だ」
「それは・・・・」
例え無実でも世間が有罪と認めればそうなってしまうという事だ。
この老人に何があったかはわからない。
ただ、常に民衆から罵倒を受けている調査兵団も
他人事ではないと焦燥を感じた。
今後、今以上に気をつけなければ
いずれこの老人のようになってしまうのだと肝に銘じていると
「故に、ここにある書物を持ち出してはならぬ」
と強く言われてしまった。
それにはハンジが猛抗議する。