過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第18章 『迅鬼狼』のアジト
張り詰めた空気が少し緩和されたと思った瞬間、
ハンジの新たな雄叫びが聞こえてきて
一同は慌てて彼女のいる部屋へと向かった。
ハンジがいたのは鍵が掛かっていた部屋だったが・・・
彼女が力技で抉じ開けたらしく扉が外れて床に転がっていた。
「うおおおおおおおおおお!!何これ!すっごい!
この部屋の本全部持って帰っていいかな!?」
正面の部屋は書庫だったのだろうか。
壁の両側には本棚が置かれ本がぎっちり詰まっていた。
ハンジはその内の一冊を手に取り興奮していたようだ。
エルヴィンも彼女に習ってそこら辺にあった本をパラパラ捲り、
その内容に息を呑む。
所々、劣化や痛みで読めないがそれは巨人に関する本だった。
・・・しかも手書きである事から、ここの家主が書いたものではないかと推察出来る。
他の本も手に取りざっと読んでみると、
そちらは立体機動装置導入前の兵法書のようなもので、
どのように巨人と対峙するかなどが書かれていた。
先人達が残したはずのその資料は現在では残っておらず、
歴代の調査兵団団長も苦心して巨人と戦っていたというのに、
まさかこんな所にこんな貴重な書物が残されているなんて・・・
と食い入るように目を通す。
取り憑かれたように本を漁るエルヴィンと、
部屋にある本を全部持ち帰ろうとするハンジに
ナナシは慌てた。
正面の扉に鍵が掛かっているのを知っていたから油断していた、と反省する。
ここには多分『迅鬼狼』の記録が残っているだろう。
この部屋を他人に触れさせたくも見せたくもなかった・・・。
リヴァイとミケも書物に手を伸ばし始め、
どんどん奥へと向かう。
命懸けで戦っているエルヴィン達にとって
ここの資料が貴重だということをよく理解していたから、
彼らを止めることも出来ず視線を彷徨わせていると
一番奥に掛かっているカーテンが目に入った。
昔ここに来た時には無かったはずのそれがやたらと気になり
神経を集中させると、ナナシは息を呑み込んだ。
「あ・・・・」