過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第18章 『迅鬼狼』のアジト
「それは置いていった方が良い。
ライフルなんぞ巨人相手には役に立たん」
「・・・それもそうだね」
名残惜しそうにライフルを置くと、
左側の部屋を物色していたリヴァイが油を見つけたらしく
エルヴィンを手招いた。
左側の部屋には立体機動装置用のガスボンベや刃もあり、
3人は状態を確認する。
流石に立体機動の本体は無かったが、
何故ガスや刃があるのだろうか?
「・・・どうやら使えそうだな」
「ったく、ここの家主は何者なんだ?闇の武器商人か何かか?」
リヴァイの軽口に「王政転覆を目論むテロリストだ」と返すと、
3人の表情が明らかに強張った。
物証が揃いまくっているこの状況では冗談には聞こえない。
王に心臓を捧げている身としては、この場所を知っているナナシも
テロリストの一味とカウントし彼を捕まえなくてはならなくなるかもしれない。
「冗談だ。ただ…かなり血の気の多いヤツだったぞ。
若ければ調査兵団に入っていたやもしれん」
悪質な冗談だと思いつつ、
エルヴィンは珍しい彼の冗談に付き合うことにした。
「ほう?それは会ってみたかった。話が合ったかもしれない」
「・・・合わんだろうな」
「おや、何故?」
「本音を言わぬお主と、本音を正面からぶつける人間が合うものか」
その会話でミケが少し笑ったのがわかり、
エルヴィンは肩を竦め「酷いな」と呟く。
「本音ばかり言ってるつもりだが…」
「そういう所が合わんのだ。わかっておるだろう?」
「さて・・・何のことかな」
エルヴィンはこんな状況にも関わらず、
ナナシと言葉を交わせたことに喜びを覚えていた。
いつも彼はあっという間に自分の前から消えてしまって、
このような応酬など出来なかったからだ。