過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第15章 合流
「何があったのっ!?緊急事態って何!?
人間が壁外を走ってきたって本当っ!?」
「・・・・お主がハンジ・ゾエか?」
「そうだけど・・・あなたは?」
答えるのも億劫でモブリットからの手紙をハンジに渡すと、
ナナシは役目を終えたとばかりにノロノロと柱に背中を預け
床に腰を下ろした。
エルヴィンが「モブリットからだ」と説明すると、
ハンジは物凄い勢いで手紙の封を切り読み始める。
手紙を読み終わったハンジは顔面蒼白になりながら、
黙ってエルヴィンに手紙を渡すと何かを問うように
リヴァイとミケに視線を投げ、二人が黙ったまま頷くと
彼女はグッと唇を噛み締めた。
モブリットの手紙を読み終えたエルヴィンは一つ息をつくと、
今いるメンバーに冷静に状況と今後について語った。
「我々は実質、壁外追放と同じ扱いを受けたという事だ。
何者かによって・・・。だがその事実は敢えて伏せ、
開閉扉が故障したという事だけ全兵士に伝える。
急いで残りの分隊長及び班長を招集しろ。
直ちにウォール・ローゼに帰還する」
三人が頷きテントから出て行くと、
エルヴィンは座り込んでいるナナシの前に膝をつき
声を掛けた。
「ありがとう、ナナシ。君のお陰で最悪の事態は何とか回避出来るだろう。
君が顔見知りのリヴァイやミケにも情報を流さなかった判断は正しい。
兵団内にいるスパイを警戒したんだね?」
「・・・あぁ」
「それにしても無茶をする。単独で壁外に来るなんて前代未聞だよ」
「少し眠らせろ。流石に・・・疲れた」
「あぁ、お休み。出発する時にまた起こすよ」
フードを被り寝息を立て始めたナナシに毛布を掛けてやり、
その頬にそっと手を這わせる。
滑々した白い頬を撫でながら穏やかな笑みを浮かべたが、
すぐに団長としての毅然な顔を作り部下を呼んだ。
呼ばれたその女性兵士はミケの直属の部下で
付き合いの長い信頼出来る人物だった。